FDMプリンターの「印刷の向き」の決め方:失敗(反り・剥がれなど)を減らすルール


Infographic showing three FDM 3D printing orientations—flat, vertical, and 45° angled—highlighting trade-offs in appearance, failure risk, strength, and support marks for scale model parts.

Choose the best FDM print orientation to reduce warping, detachments, print failures, and stringing (with a ship model example).

  • まず「失敗しやすい向き」を避ける(反り・剥がれ・支え崩れ)
  • 次に「本体強度」を層方向で決める(プリント中の造形物の崩れ防止込み)
  • 最終的には「見た目」と「後処理」も考慮して決める(段差・サポート痕)

FDM方式のプリンターで模型を作るとき、「印刷の向き」はスライスソフトで最初に決めるべき超重要ポイントです。
なぜなら、向きの判断を間違えると、反り・ベッド密着不良・成型不良・糸引き・荒れなどが同時に出て、原因の切り分けが難しくなるからです。

この記事では、FDM方式における「印刷の向き」を最短で決めるための優先順位と判断フローをまとめます。
特に、船体のような長物(大きい・長い)でも使える考え方に寄せて書きます。


この記事で扱う「印刷の向き」とは

ここで言う「印刷の向き」は、ただ「どの面をベッドに置くか」だけではありません。
FDMでは、寝かせる/立てる/傾ける、で結果がはっきり変わります。

  • ベッドに置く面(接地面積)
  • オーバーハングの量(支えが必要か)
  • 層(レイヤー)の向き(強度が変わる)
  • 表面の見え方(積層痕が目立つ面が変わる)

この4つが絡むので、「向き」は“品質と成功率のスイッチ”になります。


結論:印刷の向きはこの優先順位で決める(最短ルール)

迷ったら、優先順位はこれです。

①失敗率 → ②本体強度 → ③見た目 → ④時間/材料

時間が短い向きでも、失敗したら全損です。
大きな船体のように印刷が長時間になるほど、「最速」より「1発成功」を優先する方が結果的に早いです。


① 失敗率:まずベッド接地と安定性を見る

最初に見るのは「安定してベッドに乗るか」です。

  • 接地面積は十分か
  • 接地が“細い線”になっていないか
  • ブリムを付けても不安か
  • 重心が高くて揺れやすくないか

接地が細い・不安定な向きは、最初の一層で崩れます。
向きを決める前に、ここで落とすのが一番効きます。


② 本体強度:層の向きで造形トラブルを回避できる

FDMは層(レイヤー)の間が弱点になりやすいです。
同じ形状でも、向きが違うだけで折れ方が変わります。
また、細物だとプリント中に重要部分が折れることもあります

  • 引っ張り・曲げが掛かる方向に、層が割れないようにする
  • 本体強度を重視する。細かい部分の強度不足は修正が効くが本体が折れては成立しない。

「このパーツはどっちに力がかかるか?」を一度想像して、層割れを避ける向きに寄せます。

“FDM 3D-printed ship hull section on a Bambu Lab A1 with heavy supports; red arrows highlight fragile deck vents that snapped due to print orientation.”

材質:PETG、ノズル0.2mm、押出0.1mm、使用機種 Banbu lub A1

艦底を接地面のプリント。舷側、平らな甲板が最も綺麗な仕上がりです。
ただし甲板構造物の折れやすさ、斜めの甲板に段が出る。

窓枠はオーバーハングになり荒れたので(緑の矢印)雪風はこのままプリントしましたが、
後継機の浜風は別パーツにしました。

印刷の向きについては今後下記のように別記事で掘り下げる予定です。

FDMプリント実例:同じ条件でも、向きで“側面ディテール”が崩れる

船体の向きを変えて同一条件でプリントをしました。
こちらで詳細解説をしています。

FDMで傾けてプリントするケース

光造形方式では造形物を傾けてプリントが常識ですが、FDMではどうなのかを
検証しました。
関連記事は別記事で紹介します。


③ 見た目:段差(積層痕)が“目立つ面”を避ける

向きで一番分かりやすいのは積層痕(段差)の出方です。

  • 曲面は段差が目立ちやすい
  • 見せたい面(外装)に段差が出る向きは避ける
  • サポート痕が残る面は、なるべく「見えない面」に逃がす

艦船模型は見える面がだいたい決まっているので、判断がしやすい部類です。
(舷側・甲板上面など、“見せる面”を守る)


④ 時間/材料:最後に微調整する

「印刷時間が短い」は最後の判断材料です。
成功率・強度・見た目が同程度なら、そこで初めて時間や材料の差を見ます。
時間がいくらか短くてもやり直す方が結局時間や材料のロスになるかも知れません。


反り(Warping)は「向き+接地面+熱収縮の逃がし方」で決まる

反りは、材料が冷えて縮むときに起きる“引っ張り合い”で、薄くて長い形状ほど出やすい現象です。
設計で対処できない時に向きでできる対策は、**「反りやすい形を作らない向きにする」**こと。具体的には次の3つが効きます。

  • 接地面を増やす向きにする(端だけ接地、細い接地は反りやすい)
  • 細長い面をベッドにべったり置かない(長い直線エッジが反りの起点になりやすい)
  • 角(コーナー)をベッドから浮かせない(角が最初に持ち上がりやすい)

ただし、反りは向きだけで完全には止まりません。温度・風・速度・ブリム等の条件が大きく、ここは別記事で「反りを止める具体策」として詳しく扱います。
私が首機で使っている「Banbu lub A1」や「Banbu lub A1 mini」ではPLAやPETGではほぼこの反りはおきません。尚、この両機はABSは推奨素材にはなっていません。

関連記事:FDMの反り(Warping)を止める:症状で分岐するIf/Thenチェックリスト【PLA/PETG対応】


糸引き(Stringing)は「向き」で“出やすさ”が変わるが、原因は別にある

糸引きは、移動中に樹脂が垂れて糸状に残る現象です。
向きによって糸引きが増える/減るのは、主に**移動距離と移動回数(空中移動)**が変わるからです。

  • 突起が多い向き/島が多い向き → 移動が増えて糸引きが増えやすい
  • 高さが出る向き → 小さな島が連続して糸引きが増えやすい
  • 面で寝かせる向き → 島が減って糸引きは減りやすい(ただし下面荒れやサポ痕の問題が出る)

つまり向きは「糸引きを増やす形を避ける」効果はありますが、糸引きの根本原因(温度・リトラクション・湿気など)は別にあります。素材によっても影響を受けます。
PETG>PLA でPETGは糸引きをしやすく、精密な成型はPLAの方が向いています。

※「島(island)」=そのレイヤーで独立して存在する小さな印刷領域。島が多いほど空中移動が増え、糸引きが出やすくなります。→ 用語解説「島(islands)」へ


判断フロー:チェック

向きが決まらない時は、この順番で機械的に潰します。

Step 1:ベッドに安定して乗るか?

  • 接地面積は十分?
  • 初層が“線”になってない?
  • ブリム追加で安定しそう?

Step 2:反りやすい形か?

  • 長い・薄い・角がある → 反りやすい
  • 無理に向きだけで解決しない

Step 3:強度が必要な方向はどっち?

  • 本体の層割れが出る方向を避ける

Step 4:見た目の優先面はどこ?

大きく印刷する前に、まず小さく試す

私は大きな造形物が多いのでよく使っている方法が、縮小しての印刷です。

まずは1/2〜1/3サイズ(または重要部だけ)で試し刷りします。
時には0.2mmノズルでプリント予定のものを0.4mmノズルで試しプリントをします。
そもそも正立するのか(途中で倒れないか)、見た目の綺麗さは? サポート痕の出方やサポートの巻き込み具合は?
などを確認してから本番に入ると、造形トラブルを避け、失敗コスト(時間・材料)を下げることができます。

1日中プリントして最後の方で崩れていたら悲し過ぎますしね。


よくある失敗は“向き”で全て解決はしない

向きで改善できることは多いですが、向きだけでは解決できない失敗もあります。
これらは別の記事で対処方法を紹介したいと思います。


まとめ:向き決めチェックリスト

最後に、向きの判断を一発で固めるためのチェックリストです。

  • 初層が安定する接地面か(線接地になっていないか)
  • 反りやすい形状なら、向きより反り対策を優先しているか
  • 本体強度が必要な方向に層割れ弱点を作っていないか
  • 見せたい面に段差やサポート痕を残さない向きか
  • “最速”より“1発成功”を優先できているか

船体のような長物ほど、向きは「設計判断」です。
見せたい面を先に決めて、失敗率→本体強度→見た目の順で固める。これが最短ルールです。

印刷の向きは「失敗率→本体強度→見た目」の順で決定しよう!

3Dプリンターに関する様々な記事を載せていきます。
3Dプリンターに関する記事の総合ガイド」はこちら


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP